「フリー <無料>からお金を生み出す新戦略」を読んだ

2010 2月 6
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by yuzuru
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ネットがもたらすフリー(無料)戦略を分析し経済活動のパラダイムシフトを明らかにした本。帯には、「『本書は間違いなく、2010年代を生き抜くのに書かせない一冊だ』小飼弾氏」とあります。まったく異議なし。歴史的見地もあり大変面白く、わくわくする内容でした。

以下超まとめ。(本書と必ずしも論旨があってるとは限りません。)

アトムからビットへ

アトム(物質)中心の世界からビット(デジタルデータ、情報)中心の世界に移りつつある。アトムと異なりビットは限界費用(これ以上下げられない費用)が非常に小さい。例えば車だと開発費のみならず、原材料費、製造、運搬、販売それぞれ費用がかかる。大量に売れればそれぞれの費用は薄まっていくがモノを売る以上、値下げには限界がある。比べてソフトウェアをネットで販売する場合コピーするだけなので、限界費用を限りなく下げることができる。

ビジネスへの影響

この結果、ビジネスにおいてパラダイムシフトが起こる。ビットの世界では製品をコピーして配布するのにほとんど費用がかからない。極端な話、100人に配ろうが1000人に配ろうが費用はほぼ同じ。なので、無料で大量に配りそのうち1%でも課金できれば黒字になるというモデルも成り立つ。これがフリーミアムの基本的な考え方。金額に応じてグレードを変えるモデルは昔からあるが、ビットの限界費用の極端な小ささより、より激しい金額差(つまり片方は無料)が生まれた形で、これはある意味チープ革命と言えそう。

フリーへの世代差

著者の指摘では今の30歳以上とそれ以下の世代で無料に関する見方が異なるのだそう。ちょうどアトムからビットへの変遷が起こったタイミングと一致する。30歳以上は、無料に対して懐疑的。「安かろう悪かろう」、「どうせどこかで何かを買わされる」、「ダマされないぞ」と考える。アトムの世界では限界費用の高さより、無料分を直接回収する形になりがちで、結局「やっぱりそういうことね」と感じるケースが多い。それに対し、それ以下の世代ではむしろ無料は当たり前。無料で質の高いサービスを経験している。ビットの世界では、無料100に対し、有料1(それも熱心なユーザのみ)というバランスのため、有料と感じることは少ない。

フリーへの引力

このフリーへ移行する引力として、海賊版など違法コピーの常態化がある。デジタルデータは全く同じものがコピーできてしまうため、被害は避けられない。ただしこれら違法コピーによって著作者は直接の収入は得られないが評判を呼ぶ、有名化するなど間接的なメリットがあることもある。アーティストによっては、この状況を逆手に取り自分の楽曲はフリーで配布しファンを増やしライブで収益をあげるケースも出てきている。一部無料化することで、有料のものが今まで以上によく売れるケースも見られる。従来の、お金を出してみないとその良さが分からない、試し買いして失敗する場合もあるモデルよりは、無料で手に入れ、良かったものにお金を出すモデルの方が買い手にとって障壁が低く、合理的と言える。

フリーがもたらす多様化

ちなみに上記障壁の高さは、売り手にとっても課題であった。限界費用が高い世界では売れない場合の赤字リスクが高く、ヒット間違い無しの商品しか市場に出すことはできない。当然、売り手側で目利きし、選別する必要があった。結果、市場には売れ線の商品が並びマイナーなニーズはかき消される状態であった。限界費用が十分に低いビットの世界では小ヒットや一部に人気の商品でも販売が可能となる。(楽曲ストアに全く売れない曲が置いてあっても、費用はほとんどかからない。)売り手側で目利きせず、とりあえず商品をおいて置くことができる。そして市場が多様化する。

お金以外の価値

何かを売って、お金を稼ぐというビジネスそのものも変わっていく可能性がある。ボランティアやフリーウェア開発は今までも無償で行われる活動だがこれは必ずしも利他的行動によって行われるわけではない。マズローの5段階欲求説というのがあり、人は生理的欲求や身の安全など原始的な欲求が満たされると「人から認められたい」承認/自己実現欲求などさらに高度な欲求を持つようになる。産業革命では蒸気機関というテクノロジーの進化により限界費用が大幅に削減され、生理的欲求が満たせるようになり消費活動(物欲の追求)へと移った。ビットへの移行はフリーをもたらし、物欲を満たすことでさらなる高次の欲求へと移り、利他的な(人に貢献しあうような)活動として、非貨幣な経済がなりたつのではないか。(本書ではこういう書き方ではなかったですが)
以上

個人的に特に興味があったのは最後の部分。実感として世の中の価値観が物欲とそのためのお金を求める生き方から、ボランティアやエコなどの利他的な活動を行う生き方に移ってきているのを感じています。人に優しい社会というと嘘くさい感じがしますが、利他主義=利己主義(人を助けるのが自分の愉しみ)な活動が経済活動に取って代わる社会になっていく気がします。

公式サイト:
フリーミアム.jp [FREEMIUM.jp] クリス・アンダーソン著 『フリー <無料>からお金を生みだす新戦略』

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